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2005年10月 2日

今川夏如『トモダチニナルタメニ』

 日本で生まれ育ち「生きるのが面倒だった」青年が、補習塾での「ガラの悪い」子どもたちと出会い、「障害者を持つ人たち」と出会い、アフガニスタンで暮らす子どもたちと芸術活動を通して出会う。この本は、そんな人々との出会いのなかで、著者である今川さんが自己形成の歩みを綴ったもの。と同時に、そうした出会いのなかで筆者が考えつづけてきた「人は何のために生きるのか」というテーマにも答えようとした本である。

 この本を読み終えて、私が感じた想いをまず率直に挙げてみたい。
 一、ひさびさに若い人たちにすすめたい本に出会った。(さっそく大学一年生とともに学ぶゼミでは、これを輪読することにした。)
 二、この本を書いた今川さんとトモダチになりたい。
 三、自分が教師をしている学校にきてもらって学生とともに話をききたい。
 こう書けばわかってしまうと思うが、この本は、私にとって自分の生き方をふりかえり、これからを考えるきっかけをくれた「お気に入り」の一冊となった。

 私が、この本を若い人たちと読みたいと思ったのは、こうして「自分」を語る今川さんの文章が、若い人にも「自慢話」として受け取られることがなく、また「自分とは違うすごい人」の話として片付けてしまわないだろうという感触をもったからである。それは、今川さん自身が若い世代の一人であるということもあるが(ちなみに、今川さんは奥付を読む限り、今も二〇歳代半ば)、なにより日本の若い世代の感性をよくつかんでいると思われたからである。本書の随所にでてくる( )で括った補足的な文章が示している。

 今川さんは、アフガニスタンで、子どもたちと出会い、人々の暮らしぶりを知り、戦争が日常となっている光景を目の当たりにするなかで「自分」を見つめなおすことを迫られる。そうした「自分」とは、心理学的な「自分」というよりも、このグローバル化した世界のなかで、いわゆる先進国で生まれ育ったものとしての「自分」であり、アフガニスタンやイラクへの戦争に荷担している日本で生まれ育った「自分」である。

 なぜ日本は軍隊を海外に派遣すべきではないのか、それは、私たちが戦争をする相手の国には、これからトモダチニナル人がいるかもしれないだ。あるいは、すでにトモダチニなった人がいるからだ。戦争と平和の問題を、そうした一人一人の出会いというレベルで、そして一人の青年が「自分」の問題として論じることができるようになったことに、平和な時代への一歩を感じた。

 追伸 私が泣いたところは、この本のタイトルとなっている「トモダチニナルタメニ」が登場するところ。細かい説明をすると、ネタバレしてしまうので、ここではこれ以上説明しないほうがいいだろう。この本を読んだ人なら、わかってくれると思う。

(今川夏如『トモダチニナルタメニ』新日本出版社、2005年)

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コメント

レスありがとうございました。戦争や平和を、「一人一人の生活のレベルで」語る意味について、ご指摘にとても共感します。学生の方がどのように読まれるか、楽しみです。
なかなか長野方面に参る機会がありませんが、そういうことがあれば、ご連絡させていただきます。HPにあるいろいろな文書も、じっくり読ませていただこうと思っています。

 角田さん、コメントありがとうございました。こちらこそ、 いい本をつくっていただいて、ありがとうございました。

 ここ数年、生き方を考えるための本として、「今どき」の大学生に紹介したいと思っても、なかなかぴたりとくるものがなくて困っていたのです。私が学生時代のころ(1980年代末ごろ)には『君たちはどう生きるか』がまだ定番として読まれていたように思います(少なくとも、教員からはすすめられた)。しかし、読書になれていない「今どき」の大学生には分量が多く、また『君たちはどう生きるか』が当時の日本のなかでどのような位置にあったかということも、ただ読んだだけではなかなかつかんでもらえません。ただ、「いい本だよ」とすすめるだけでは、うまく伝わらないなあと感じていたのです。

 そんなとき、『トモダチニナルタメニ』は、若い人の感性にもぴたりとはまるのではないかと思ったわけです。戦争や平和をテーマに語るにも、階級や民族のレベルで語っても「今どき」の若い人には伝わりにくいと感じています。一人一人の生活のレベルで、戦争や平和の問題を、一人の人間として語っていく、そんな語り口が大切なんだと思います。ミスター・チルドレンの「タガタメ」もそんな視座から歌われていると思っていますし、この本もそうだと思います。

 ともあれ、学生といっしょによみはじめることになりましたので、その結果をまた報告できたら、と思っています。

 追伸 座談会をしたのは、大学院生のころで、『物質の宇宙史』を書いた青木和光さんとの対談でした。私は、100年程度の単位で歴史を見ていたのだけど、何億年という単位で歴史を見ている青木さんと話ができて、面白かったのを覚えています。
 角田さん、また、お会いする機会があればいいですね。今川さんにもよろしくお伝え下さい。

 はじめまして。今川夏如さんのところから参りました。この本をつくるお手伝いをさせていただいた者です。そんな立場の者がコメントさせていただくのは、あまりよくないとも思ったのですが、実は、私、以前にこの本の会社が出していた大学生向けの新聞の編集部におり、その新聞で(直接の担当ではなく、私は編集の責任者としてかかわったのですが)石原さんにも登場いただいたことがあったので(研究者をめざす人の生き方のようなテーマの対談だったと思います)、ひじょうに懐かしく思い、一言ごあいさつをと思った次第です。
 そのような、「個人的」立場からのコメントということでお許しください(ちなみに、私、学部時代は名大教育で技教の佐々木ゼミでした。それもあってなんとなく親近感を感じまして…)。アップしていただいた感想、とても興味深く、うれしく拝見いたしました。ありがとうございます。

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