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2005年9月11日

円満字二郎『人名用漢字の戦後史』

 子どもの名付けに、夫婦で何ヶ月も考えつづけた結果決めた漢字が、戸籍上使えないということはわかった時、人名に使える漢字の少なさにびっくりした。
 なんでこんなに少ないんだろう?そもそもなんで制限されなきゃいけないの?読み方はなんでもありなのに、漢字はなぜ?子どもの名付けにこだわろうとする夫婦がぶつかる疑問に、ばっちり答えてくれるのが、この本。

「……そもそも名前の漢字制限はどのようにしてスタートしたのか。人名用漢字という制度はなぜ必要とされたのか。それが数次にわたって改訂されてきたのは、どのような事情によるものなのか。おのおのの改訂を後押ししたのは、いったいどういう力なのか。
 そういった歴史をたどっていくと、それぞれの時代が漢字に影響を与え、それに対して漢字が応えるようすが見えてくると、私は思う。そしてその中から、現代社会において漢字が持っている性格と、その果たしている役割が、見えてくるように思えるのだ。」(「まえがき」より)

 一見、マニアックとも思える歴史を、見事に再構成し、「現代社会において漢字が持っている性格」をおもしろく描き出してくれていると思う。

 ただ、残念なのは、本書のキー概念となっている「唯一無二性」については、筆者も使いこなせていない印象が残る事(この点については、より精緻な批判が必要だろうと思うので、後日、余裕がある時に論じなおしたい)と、それぞれの章のまとめが、苦し紛れに書かれている印象を受ける事だ。実際、まとめになっておらず、本論と同じ文章の反復がされているに過ぎない箇所が幾度もでてくる。

 とはいえ、人名用漢字をめぐる入り組んだ史実を、わかりやすく、おもしろく整理して見せてくれただけでも本書の価値はある。

(円満字二郎『人名用漢字の戦後史(岩波新書)』岩波書店、2005年)

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コメント

安岡様
コメントありがとうございました。史料までさかのぼって確認することまで、とてもできない私にとって、とてもありがたいコメントでした。

安岡さんの日記(サイト)も拝見しました。
専門の研究者の眼から見ると、『人名漢字の戦後史』における史料の扱いには疑義ありとのことですね。

私は、安岡さんが指摘された点については何も気がついておりませんでした。クリティカルに読むという姿勢が欠けていたと思いますし、岩波新書ならそこまで疑わなくても大丈夫という思い込みもあったかもしれません。あらためて、文章を公にするということの厳しさや責任を考えさせられています。

私もこの本、あちこち納得がいきませんでした。たとえば、pp.75-76に示されてる「字体は一九五一年内閣告示による」92字の表です。これ、『1951年5月25日内閣告示第1号』の92字の表じゃありません。これは、『国語審議会報告書 昭和24年6月~27年4月』のp.8に載ってる表で、官報に載った『内閣告示』とは、少なくとも「斉」が異なります。こういうのを見ると、どうも内容もアヤシイんじゃないか、と思えてきてしまうのが、非常に残念です。

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